休業中の飲酒

 精神的不調により休業した場合に、診断書に記載された診断名と職場で困る問題点が異なることが少なくない。

 飲酒はよくある例である。うつ病の診断名の下で、主治医は飲酒を気にしていないのか「うつ状態が回復したら戻っていいですよ」とのことを主治医には言われたようである。

 復帰可能ということで診断書が出て、いざ面談というときに顔が赤い。話を聞いていると飲酒は少量だが続けているとのこと。「主治医は酒のことは量に気を付けてと言っていただけだった」と。どう本人に返すか。

 病気休暇の際に、周囲は本人の代わりに業務をやっている。代わりの方は本来やりたいことがあっても休んだ人も大変だろうと思い業務を引き受けたのだろう。その方の気持ちを差し置いて飲むのは失礼なのではないか、ということを面談の際には伝えている。また、復帰時に顔が赤く酒が残っていれば、上長も引き受けに難色を示すだろう。

 周囲の気持ちを考えれば、まず断酒を原則として復帰準備に向かう必要がある。やめられない場合は主治医にも状態を確認し、酒の問題があればアルコールの問題も取り組む必要がある。

 休んだ場合はどう戻るか、まで初めに決めておけるとよい。診断書が出たから休む、復帰するだけでは問題が解決していないことも多い。受け入れに困ることについてはきちんと本人に伝えて対策を練る必要がある。

精神鑑定はなぜ間違えるのか?

  過去の事件の鑑定書などをもとに、著者による診立てを記載している。昭和・平成の事件5つを取り上げている。

 池田小事件は私が覚えている中で衝撃的な事件であった。最終的な診断はこれまで知らず、責任能力ありという事だけは覚えていたが、ADHDの二次障害の可能性を示唆。本人の動きから何となく理解できるが、世間一般で知られているような「発達障害による生きづらさ」よりも「どことなく怖い」部分がクローズアップされている気がする。

 帝銀事件は真実は不明であるが、自身で道具を準備し犯行を実行するには、能力的に不十分だったのでは、という印象を受けた。完遂する能力がなければ真犯人や共犯がいてもおかしくはないと思う。

 コルサコフ症候群による人格変化。アルコールによる方はよく見るが、もう少しこの疾患については次回以降調べてみる。

マネジメントに専念できない

 昔は退職間近の管理職の方がハンコだけ押している漫画を見た記憶がうっすらとよみがえる。今ほど納期が短くなく、各職の忙しさはあるものの会社の経費で落とせるものも多いので、半ば納得しながら仕事をしていたと思う。

 現代は納期が短く、人口過少時代に入り人手が少なくなっている。就活生の辞退データが商品になるくらいに人材確保に躍起になっており、現場に人がいない。管理職が現場を兼務せざるを得ず、ベテランの管理職からは「片手落ち」を指摘されてしまう。悪循環に陥ってしまう。

 ネット時代の会社構造はどこを目指すか。少ない管理職で現場をまとめられるのが、時間制限がある中ではいいのではないだろうか。多くの中途半端な管理職を育てるよりも「帝王学」のような育て方を会社もできると思う。ソフトバンクの孫社長がツイッターで”やりましょう”というような、社長が直接現場に指示をする。中途半端な管理職の整理とともに、会社の目指す方向に向かいやすくなると思う。会社規模を分社などにより縮小化も必要になると思う。

 とにかく管理職を増やす、だけでは未来は見えない。「船頭多くして船山に上る」の通り、迷走してしまいそうである。

働き方改革の最初の壁

 働き方改革という名のもと、時間外勤務の上限を超えると罰則規定が設けられるようになった。

 他社の方と情報共有して確認できたのは、課長など管理職の残業時間が増えたことだ。組合員として守られていない部分にしわ寄せが来る。これは始まる前から想定されていた。

 実際に過重労働面談者の対象はほぼ管理職のみである。電車で乗り過ごし終点で折り返したところで慌てて下りる、飲みに行き、次の日に寝坊し上級管理職に怒られる…そんな姿を見ると、脇で社員が「管理職にはなりたくないよね」と昇格を嫌がる。昇格すると地獄が待っている、になると会社に残るより管理職でなくとも成果を出せば給料が上がるところやフリーランスに動く労働者が増えていくのではないか、とふと考えてしまう。

 会社の構造改革も急がれる。管理職が多い会社は時間外制限がない会社と思われブラック企業のレッテルを貼られかねない。指揮系統が社長-取締役-部長-…-課長-平社員であれば、本当に必要な役職のみに整理していく必要がある。ソフトバンクのように社長から直接指示が出すことができれば意思決定までの時間が短くなる、ハンコをもらうスタンプラリーなどの余計な事務処理が減る。あくまで理想論なので、現職の降格は難しいのですぐには動けないが、長期展望は組織の簡素化になると思う。

 このまま有名企業の管理職の過労死をニュースで取り上げられるまで待つしかないのか。非常に歯がゆい。

精神科医の”決め台詞”

 産業医として精神科医の先生に社員さんを紹介し、経過順調に戻ってくると、また他の方の不調時に同じ先生に依頼することが多い。何例か症例が蓄積すると、先生の決め台詞といえる定型語が見えてくる。印象に残った言葉を挙げてみる。

それはあなた自身の問題です。

 決断を医師に委ねるのではなく、本人に決めてもらう。相手に決断させて失敗すると遺恨や後悔につながる。医師はそこまで決める立場でもない。現実とどう折り合いをつけるか考える上でも、いい言葉だと思う。

夜11時に寝る。

 小児科のあとで精神科に入ってらっしゃった先生のフレーズ。リズム崩さずに生活させるため、夜更かしをさせない。どの病圏の方にも適用できるフレーズである。

命があれば私は何とかできる。

 自殺企図および自傷行為後に本人に伝えたフレーズである。危機迫った状況で本人の腑に落ちたのか、その後立て直して安定に向かったケースだが、ここまで自分も危機迫った方に言うことができるだろうか。迷う時点で自分に覚悟がないということなのか。主治医になるということは、その覚悟をしているということを考えさせられた。

 私自身がよく使うフレーズは何か考えたが、「朝は起きる、何か食べる、酒飲まない」だろうか。休みに入るときにどう過ごせばよいかのアドバイスを精神科の先生が言わないケースもあるため、シンプルに伝える言葉を決めている。

 自分も成長すると、新たな決め台詞が出てくるだろう。

 

謝罪の仕方を考える

 謝罪の仕方で受け取り方の印象はだいぶ変わる。謝り方教室の講師を仕事にしている方もいるくらいなので、社会の需要も大きいのであろう。

 私が思い浮かべた中で、テレビを見ていて印象に残るのは「非定型」の謝り方だ。 非定型とは「心の中では何を考えているかわからない」ような印象を受け手に与える謝り方とする。

 具体的にはどのようなものか。昔飲食店で責任者が謝罪の時に「申し訳ありませんでした」と語気を強めて言い、本心では謝るつもりはないんだろうなと思わせた例や、芸能人が警察を出たときにドラマで見せるような土下座をした時だ。劇中の役になり切ったような謝り方であり、本心は謝っていると思うが「パフォーマンスじゃね?」と思わせるような動きにも見える。本心が見えない謝り方は受け手に悪印象を与える。

 最近では地方の芸術展の出品作が問題になり芸術監督が謝罪文を出していたが、文面だけで出すのはどうか。私としては悪手だと言い切る。なぜか。

 文面だけでは感情が見えてこないので、ネットに詳しい方が使う手段ではないと思う。パソコン前で胡坐をかきながら謝罪文を書いても、この文章は作れてしまう。内容も誰に対して、どの内容について言及しているのか分からず、ただ長い。文章だけでも本人の中で腑に落ちている印象が全く見受けられない。この内容であれば、今の時点で出さずに、「俺は間違ったことをやっていない」と開き直るか、腑に落ちた時点で誰に何を謝るか決めて謝罪する方が印象は良いと思う。

 展示物の内容は論外だが、火消しだけしている感じなので世間の印象を悪くしていることを理解できないと、監督の今後の仕事に影響が出ると思う。

高濃度の一酸化炭素曝露

 サッカーのエミリアーノ・サラ選手(アルゼンチン)が乗っていた飛行機の遭難事故が2019年1月21日に発生。2月3日に海底で飛行機が発見、2月7日に遺体が収容。8月14日に高濃度の一酸化炭素に曝露していたことが報道された。

 飛行機の中は窓を開けられないので空調の故障が発生すれば換気不十分な環境になることは考えやすい。もしくはエンジン等のトラブルが発生したか、想定しにくいが内部で燃焼器具を使用したのか。

 飛行機についてあまり詳しくないため、自分の推論で述べさせていただく。エンジン等のトラブルにより、飛行機内部へ一酸化炭素が充満したのが考えやすそうだ。溺水という言葉がニュースに出ていないことから、墜落の前に意識消失、呼吸停止になっていたのではないか。

 調査結果の発表が2020年とのことで、全貌が分かれば今後の対策が考えられるのか。結果が出たら改めて検討してみる。

断酒か、節酒か

 断酒か節酒か。

 健康診断の肝機能障害に対しての保健指導で、節酒か断酒か、どちらが取り組めそうかで悩むケースもあるが、大まかな方針は以下のようになる。

 断酒から入るほうが簡単である。不眠をきっかけに連続飲酒になるケースが多いが、若い方の場合は運動など飲酒以外の実行可能な対策をあげやすいので、断酒をすすめている。

 節酒は中年以降で本人が「断酒は無理」といい、仕事上影響がない場合の提案になる。接待の飲み会以外は飲まないなどの毎日ちびちびだけは最低限避けるように話をしている。

 節酒の場合は「どこまで飲めるか」で悩むケースが多い。酒瓶に線を引き、「今日はここまで飲む」など酒で悩む時間に割かれてしまう。その時間を他の活動に使う方が健康的である。そのため、まずは断酒が私からの意見である。

 

電話・メール・面談の使い分け

 休業した方に対してのアプローチは電話・メール・面談の3つが主なものとして考えられる。遠隔診療としてSkypeテレビ面談は面談に含まれる。LINEなどの情報伝達ツールは音声なら電話、メッセージならメールに準ずるが、情報流出の問題があるためどのような使い分けがよいか。

① 原則、面談を行う

 顔色や声の調子など、文字ではわからない部分が見えてくる。服装もその時の気分により変わる方もおり、都度話を振ると本人の気付きにつながることもある。

 不調時、来れないレベルの場合は電話する

 パニック障害で電話を取れないケースもあるが、休業中は電話で声の調子や張りを聞くだけでも様子は何となくわかる。会社のそばや社内まで来れそうかは都度確認し、来れそうなら面談で様子をうかがう。

 電話で性格が見えてくることもある。「13時に連絡ください」と伝えると、13時の時報と同時に連絡がくる。これは神経質な方や統合失調症圏で見られる動きである。朝に電話をしてくることや、真夜中に着信履歴があり、電話をとると泥酔している場合はアルコールの問題が大抵ある。電話を待ってもかかってこない場合は電話に対する抵抗感や「悪い報告ができない」性格なのかもしれない。

③ メールの使い方

 メールはあくまで文面だけなので、面談で約束したことの記録やスケジュール調整などに限定される。メールで「復帰可能の診断書が出たので明日から行きます」と言ってくる人もいるが、顔を合わせないと焦燥感からの復帰も考えられるため、面談を必ず入れる。電話だけでも事前に様子を伺い復帰の最低条件を満たしているかは確認しておく。

 記録に残るということで、本人に連絡しても繋がらないときにメールで様子伺いを入れる、などのやり方もある。

 おそらく産業保健スタッフがいるところでは、メールのみで復帰判断はしないと思われる。テレビ面談や業務用SNSを入れているところもあり、ツールの役割を一度確認しておくのもよいであろう。

  

 

テレビ面談は面談に含まれるが、

新型うつ病をかみ砕いて解釈する

 メンタルヘルス対策として、職場教育でセルフケアおよびラインケアの研修計画や資料作成を行っている。研修での意見を見ると、自分が会社の中で見えない部分が見えてきたり、本当に知りたい部分が分かったり、「自分がどういう部分で期待されているか・必要でないのか」を知れるので非常に勉強になる。

 意見で多いのが上司が「対応に困る」ケース。関係が悪いのが原因ということも少なくなく、それまでの職場異動歴や健康診断記録、上司と本人からのヒアリングを踏まえて対策を検討している。

 研修では総論で印象を話しているが、若手の場合は上司が「新型うつ病」と言い切って相談に来ることも少なくない。遊びや飲み会の時は元気というだけでこのレッテル貼りになっているのはどうしたものかと自分としては考えてしまう。

 業務遂行能力は”悪くない”のであれば、どのような点で上司が困っているのか、具体的な問題を挙げてもらう。朝が弱くて遅刻が多い、報告連絡が遅い、周囲の社員とトラブルでよく揉める…など。治療というよりは本人に上司が困ることを簡潔に伝えるほうが解決できることが少なくない。治療に入ることで逆に仕事中に眠くなる場合もあるため、業務ができる場合は指導や話をしてみてから医療機関を受診するか決める。

 業務遂行能力が”悪い”のであれば、実際の業務で得意、不得意はあるかどうかを上司がまずは見てみる。電話をひたすら避ける、業務日報などまとめが強い、会議中の集中度が最初の部長の話のときだけ落ちる…など。能力のばらつきを伝えてみて、本人がそのことを意識するかどうかで判断が変わる。本人の希望があれば医療機関へ紹介し、得意不得意が見える場合は職場で得意な分野を伸ばしながら、苦手な分野へのアプローチを検討していく。

 マスコミが取り上げた新型うつ病、変なカテゴリーを作ったために対策を練るのに少し苦労する。この問題の後始末はまだまだかかりそうである。