プラセボの効果

 プラセボとは、薬理学的に効果を持たない物質が、時に臨床効果をもたらすものを指します。薬理学的に効果を持たない物質の一例としては、食塩水・乳糖などです。

 被暗示性の高い、特に神経症圏の方は実効薬を出さなくとも偽薬でも効くのではないか、と感じる方もいるので偽薬ではだめか、と病棟カンファレンスで議題に出すたびに「本人の同意なしに出すのは倫理的に問題がある」との指摘があり、自分も考え直して実行に移したことは今までありません。

偽薬でなぜ効果があるのか

 ノンアルコールビールをイメージするといいと思います。日本で出ているノンアルコールビールはアルコールは含有されていないため、アルコールの直接作用による「酔い」は出現しないはずですが、「酔いを確かに感じる」と皆さんおっしゃいます。

 お酒を飲むのと同じ動作を行うことで、頭の中でお酒を飲んだ時と同じような交感神経の亢進が起き、脳の中でお酒を飲んだ体験が進行していきます。

 飲む一連の行動をとるプロセスで酔っていると言えます。

 お酒を飲んだことがない人は酔うでしょうか。飲んだ時にどうなるかを脳でイメージできないため、習慣的に飲む/飲んでいた人のように酔うことはないです。「ノンアルコールビールでも酔いますよ」と言うのはいいですが、他人に同意を求めても同意しない人が多いのはそういうことです。

偽薬が必要な時はどうするか

 偽薬が絶対に必要な時は多くないと思いますが、薬の副作用が出やすく被暗示性が高い症例では検討の余地があります。上記の通り、倫理的な問題があり、本人にも同意していただく必要があります。

 上記のようなプロセスを説明したうえで、「今回出すのは偽薬ですが、他の薬と同様の効果が期待できる」ことを、本人の意向を確認します。最初から偽薬と分かれば効果が期待できないはずですが、最初から手の内を明かすことで患者さん本人も薬の効果が行動のプロセスで生じることを意識するようになります。

 当然ですが、この場合は主治医が意見を対立してまで押し通すものではないので、じっくり考えたり調べてもらった上で納得してから治療開始します。


 プロセスで酔いを体感するのと同様に、他の物質でも同じように体感できます。抗不安薬が自宅にあるビタミン剤などでも起こりえることを伝え、どうなるかを次回外来で確認し、減薬のきっかけを作るのも手です。たばこでは吸う仕草をして煙を吐く真似をする時にタバコの煙がみえる、というのは幻覚ですが、吸うプロセスの中で頭の中で再現して起きるもので、抗精神病薬を急いで調整する必要はないものと思われます。

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