「子供は社会で育てるべきだ」
この論調を強く語る社会学者もいますが、この意見自体は理解できます。実際にどう対応するかの声が聞かれないのが悲しいところです。
精神科をやっていると妊娠をどうするかが若い女性とのやりとりでは必ず出てきます。
<万が一の時子供ができて育て方のイメージが浮かばないうちはゴムをつけて>
「でも相手が気持ちいいからというと断りにくいし…断ったら彼が離れていきそうで…」
<妊娠したことを話したら彼は出産に協力してくれるか>
「どうかは…わかんないな」
妊娠が発覚して、精神科の薬を続けるのは危ないため、妊娠したら妊娠継続するのか現時点での意向を確認し、妊娠継続なら最小限の薬のみに整理する。ただし、その時点で精神科や主治医への不満があれば精神科通院継続はしなくなります。妊娠でよくも悪くも精神状態が変わるのはざらであるため、中断後の状態が安定しているのを祈るしかないことが多いです。連絡もつかないケースが多いので。
このニュースは妊娠した、中絶するかどうか迷っている、妊娠したら自分で育てられるのかもわからない、親との関係は良くない等の条件が重なり、出産後の支援体制が決まっていない中方針を検討しなければならない場合もあり、一つの選択肢としてはありなのでは、と私は考えます。
軽度知的障害や判断できない人間にとって、妊娠後期最後まで悩み、追い詰められるケースも少なくありません。理想論だけでは生きづらい方がどうしてもはみ出されてしまう。「無責任」「計画立てろ」と言われても、本人の苦しみは誰も受け止めないのは非常につらいことです。言葉で追い詰められて母子心中や生み捨てという事態が起こり得ます。それよりは今回のような内密出産でも子供の命を助けるのが社会の役割だと思います。
育てる能力がない人でも出産できるというのが今流行りのマイノリティへの支援だと思います。排除はできるがLGBTsばかりでなく、昔から妊娠に関わるケースは目を向けられてきませんでした。
出産する人、生まれてくる子供たちに幸あれ。
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