プラセボ接種と偽薬処方

 ワクチン接種で接種委託料をだまし取り問題になった事件で、ワクチンでなく生理食塩水を接種していたという内容が報道されています。

 ワクチンが怖いものだという説明をした上で生理食塩水を接種したということで、接種された方にとって「医師に騙された」という怒りしか覚えないと思います。

 mRNAワクチンはこれまでのワクチンよりも早急にできたこともあり、不安を感じる医療者が反ワクチンを唱えることもあります。思想は自由ですが、困っている人をだますのは道義的に問題です。

 このニュースは医師が悪い、という結論になりますが、自分も人をだますことがないのかを考えてみました。

「プラセボでもいいのではないか…」

 プラセボ=偽薬、乳糖など薬理作用の影響がほとんどないものを処方して本人を安心させてみては、という話は病棟の薬剤師や看護師からカンファレンスで上がることがあったような気がします。その方は不安が元で処方を求めているのだから、何を出しても本人としては満足するというのです。

 抗不安薬は筋弛緩や脱抑制、依存性の問題が大きく、不安だからだらだら処方を増やすということは本来適正な使い方ではないのは確かです。脱抑制で興奮しやすくなってしまう人はなおさら抗不安薬を出したくないのは理解できます。

 それでも偽薬を処方すると、本人が気づいた時点で治療関係の破綻を意味します。安全かもしれないが倫理的には大問題になります。精神疾患や強度の不安からくるものだから偽薬を処方するのではなく、心理的な影響が大きいため今の状態に効くと思われることを伝えて処方するか、今の状態で薬理作用のある薬を出すと害のほうが大きいため処方しない、という2択を医師としては考えて伝えることになります。自分は後者の何も処方しないか、どうしてもの場合に抗不安薬以外の処方を提案することになります。効果が期待できるのであれば抗うつ薬やタンドスピロン、あとは漢方を証に合わせて加味逍遥散、抑肝散などを提案するかになります。漢方も低カリウム血症や肺線維症等の副作用には注意が必要なため、副作用は十分に説明して処方することになります。

 処方しない場合も虚はいけないことを関係者にも理解してもらわないといけません。一番これが難しいのも事実ですが。

 生理食塩水を接種した医師も、本人としてはよかれという思いからワクチンではなく生理食塩水を打ったということですが、客観的に有効性があることは確かです。自身が反ワクチンなのは思想の自由ですが、打たないならちゃんと説明して「うちでは打ちません」と言い委託料を辞退すれば問題はなかったと思います。

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