脳波検査で精神科専門医が扱いに困るケースを客観的に解決していくクリニックがSNSで話題になっています。この話題は複数の問題を含んでいるような気がます。
自由診療なので受ける受けないは自分の意思で決めることになると思いますが、個人的に気になる点を整理してみました。クリニックの経営方針を批判するというよりは、精神科の限界や今後の進む道を考えないといけない気がしています。
他の疾患を鑑別しきれるか
ある程度のパターンが蓄積されていればよいでしょうが、検査だけで鑑別しきれるとは限りません。妄想を伴ううつ病、非定型精神病、シゾイドパーソナリティ障害とアスペルガー障害など診断基準を重複したものはどのように扱われるのか気になります。
心因性の考慮
職場のパワハラでうつ病に追い込まれた、恋愛の破綻で自殺願望が生じたものを取り扱うことができるのでしょうか。少なくとも環境調整や恋愛の消化・次に向かう気持ちにさせないと、TMSだけでは問題解決にならなそうです。うつが治れば何でも乗り切れるわけではないです。現実に向き合う力を戻して初めて問題解決になると思います。
売り上げを考えれば、心因が解決せず治療を繰り返す方が長期に受診してくれそうです。それをするのは倫理的には問題だと思います。
ただ、心因性を考慮しないのは、既存のメンタルクリニックでも同じかもしれません。忙しい中で心の動きをきちんと聞く時間がなければ、処方を出して終わり。心因が解決せずリピーターが残るだけになります。リピーターは継続支援が必要な方(統合失調症や気分障害など服薬が不可欠、高次脳機能障害の支援が必要)に絞れるのがいい精神科医です。薬はよくてTMSはダメ、というわけでもなく、適切な療法を選択できないのは患者にとっては害になります。
自由診療の到来
自由診療といえば美容外科ですが、精神科にも自由診療の波が到来しそうです。精神科の場合は休職や失職が絡むので平均年収が下がる母集団になるものの、効果がある程度でれば一度やってみようかという心理になるかもしれません。
エビデンスが出てくれば、他のクリニックの方針も変わるかもしれませんが、どこまでの結果が出るのやら成り行きを見守ってみます。
診断基準に則らない検査や治療を行うことは、個人的にはためらわれます。ただ、うつ病で長期間罹患し服用していると、どこかで今の展開を打破するためにこれに挑戦する方は少なくないかもしれません。自分としてできそうなのは処方薬の整理・特にベンゾジアゼピン系からどんどん整理するくらいしかできない気がします。
専門医の先生ではなさそうですが、効果が出れば黒船になるのではとも思えます。
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