精神科に携わると、問題の深さや自分の技量によってふたを開けるか閉めるかの戦略を立てていきます。
臨床心理士はふたを開けることをできる先生もいますが、普段の外来診療では時間もない、問題をすべて引き受けられるかを考えなければならず、ふたを閉める方向になることが多いです。
中途半端に開けて他の先生に紹介するというのも本人への信頼が崩れることと、他の先生に対しても失礼な気がします。自分の力を過信せずできる範囲を決めていきます。本人がこういう治療をしてほしいと言ってきても、できないものはできません。
企業内で相談を受けた場合
企業の場合、相談内容によってはハラスメントが絡み、本人にとってストレスのかかることを話してもらう場面が出てきます。時間があるからふたを開けてもいいのか…と考えることもありますが、治療に時間のかかるケースが多いです。会社では単発の相談が主になりますので、話は聞き必要な調整を検討することになりますが、会社で起きた事象以上に深堀りは難しいです。
話を聞き本人の問題なのか、職場環境の問題になるのか、本人の意向はとりあえず聞いた上で、それまでの職場環境適応レベルを踏まえて動くかどうか判断することになります。
環境調整を言い出すと、上司の方が喜んでホイホイ動くこともあり、安易に配置転換の意見をせず総括ラインと相談を重ねた上で判断を出していきます。
そもそも産業医からは意見を言うまではできるものの人事権がありません。あまりに動きが悪い場合は「俺はきちんと意見を言ったぞ」であとは人事側に動きを決めてもらうこともありますが。
会社の健康管理室にまず相談、というケースは非常に少ないものの、どの会社でも案内を出したら難しい案件も面談で出てきます。なぜ来たかと問うと、結果をみたら「専門家に相談を」と記載があったとのケースも増えている気がします。
似たケースとして自殺防止サポートの広告が芸能記事の最後に貼ってあることがありますが、書いた人は書きっぱなしで終わりになっていないでしょうか。書いた人も関係者や専門家なんだから、責任ある文章を書きましょう。
会社の健康管理室では各スタッフの強み・背景がだいぶ異なることもあり、頼もしい心理士が数名いるスタッフ構成でない限りは閉じる方向が原則ではないだろうかと考えます。
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