数式を用いながら、社員採用・契約の戦略を考えてみる。
抑うつ状態での休職者を見渡すと、正社員に移行したあたりで不調に至った例が複数みられる。途中までは年俸制や成功報酬のような給料の出し方だったようだ。正社員になると継続雇用の保証と退職金が支給されるようになるものの、月収はは下がるが。定年まで勤め上げると合計の収入は正社員になるほうがよいという条件で、これらの方はみな正社員登用を拒否した。なぜか。
要は目の前の収入をとるか、20-30年後の合計収入をとるか、という話である。時間経過に伴う報酬の目減りという観点でこれを考えていく。
報酬の目減りは人間では指数関数モデルと双曲線モデルがあり、その状況に応じて2つのモデルが使い分けられている。Vが目減り後の報酬、Rがお金などの報酬、Dが時間である。κ、γの定数は個人によって異なり、衝動性の高いタイプはこの定数が小さくなる。計算するとわかるが、定数が小さくなるほどVが小さくなる。
・双曲線モデル V=R/(1+κD) κは定数
・指数関数モデル V=RγD γは0-1の定数
グラフは指数関数モデルでイメージを作成したが、Excelを使ったわけではないので参考程度に。

タバコやアルコールを含む物質使用障害、およびADHDなどの衝動性が高いタイプで定数が小さくなるようだが、この考えから正社員は左の「生涯収入が高い」、期間契約やフリーランスで時々休んだり旅に出るタイプは右の「目の前の収入が高い」方を選ぶことになる。
最初に記載した正社員登用を拒否した方は、面接でアルコールとタバコ使用者であった。目の前の収入が減ることで人生を悲観したようである。
これを応用すると、採用側は会社の繁忙期や中期戦略でどのような人を取ればよいかという考えにもつながる。アルコールの問題があるものの、技術及び問題行動への対策を契約時に確認した上で期間限定の支援を入れるのは雇用主・個人にとってプラスである。中長期戦略でこれらの方を正社員でとどめようとすると、逆に不満が出て長続きしないかもしれない。
参考文献 志々田一宏他 :衝動性の神経科学的基盤.精神科治療学.21;807-815,2006
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