電話・メール・面談の使い分け

 休業した方に対してのアプローチは電話・メール・面談の3つが主なものとして考えられる。遠隔診療としてSkypeテレビ面談は面談に含まれる。LINEなどの情報伝達ツールは音声なら電話、メッセージならメールに準ずるが、情報流出の問題があるためどのような使い分けがよいか。

① 原則、面談を行う

 顔色や声の調子など、文字ではわからない部分が見えてくる。服装もその時の気分により変わる方もおり、都度話を振ると本人の気付きにつながることもある。

 不調時、来れないレベルの場合は電話する

 パニック障害で電話を取れないケースもあるが、休業中は電話で声の調子や張りを聞くだけでも様子は何となくわかる。会社のそばや社内まで来れそうかは都度確認し、来れそうなら面談で様子をうかがう。

 電話で性格が見えてくることもある。「13時に連絡ください」と伝えると、13時の時報と同時に連絡がくる。これは神経質な方や統合失調症圏で見られる動きである。朝に電話をしてくることや、真夜中に着信履歴があり、電話をとると泥酔している場合はアルコールの問題が大抵ある。電話を待ってもかかってこない場合は電話に対する抵抗感や「悪い報告ができない」性格なのかもしれない。

③ メールの使い方

 メールはあくまで文面だけなので、面談で約束したことの記録やスケジュール調整などに限定される。メールで「復帰可能の診断書が出たので明日から行きます」と言ってくる人もいるが、顔を合わせないと焦燥感からの復帰も考えられるため、面談を必ず入れる。電話だけでも事前に様子を伺い復帰の最低条件を満たしているかは確認しておく。

 記録に残るということで、本人に連絡しても繋がらないときにメールで様子伺いを入れる、などのやり方もある。

 おそらく産業保健スタッフがいるところでは、メールのみで復帰判断はしないと思われる。テレビ面談や業務用SNSを入れているところもあり、ツールの役割を一度確認しておくのもよいであろう。

  

 

テレビ面談は面談に含まれるが、

新型うつ病をかみ砕いて解釈する

 メンタルヘルス対策として、職場教育でセルフケアおよびラインケアの研修計画や資料作成を行っている。研修での意見を見ると、自分が会社の中で見えない部分が見えてきたり、本当に知りたい部分が分かったり、「自分がどういう部分で期待されているか・必要でないのか」を知れるので非常に勉強になる。

 意見で多いのが上司が「対応に困る」ケース。関係が悪いのが原因ということも少なくなく、それまでの職場異動歴や健康診断記録、上司と本人からのヒアリングを踏まえて対策を検討している。

 研修では総論で印象を話しているが、若手の場合は上司が「新型うつ病」と言い切って相談に来ることも少なくない。遊びや飲み会の時は元気というだけでこのレッテル貼りになっているのはどうしたものかと自分としては考えてしまう。

 業務遂行能力は”悪くない”のであれば、どのような点で上司が困っているのか、具体的な問題を挙げてもらう。朝が弱くて遅刻が多い、報告連絡が遅い、周囲の社員とトラブルでよく揉める…など。治療というよりは本人に上司が困ることを簡潔に伝えるほうが解決できることが少なくない。治療に入ることで逆に仕事中に眠くなる場合もあるため、業務ができる場合は指導や話をしてみてから医療機関を受診するか決める。

 業務遂行能力が”悪い”のであれば、実際の業務で得意、不得意はあるかどうかを上司がまずは見てみる。電話をひたすら避ける、業務日報などまとめが強い、会議中の集中度が最初の部長の話のときだけ落ちる…など。能力のばらつきを伝えてみて、本人がそのことを意識するかどうかで判断が変わる。本人の希望があれば医療機関へ紹介し、得意不得意が見える場合は職場で得意な分野を伸ばしながら、苦手な分野へのアプローチを検討していく。

 マスコミが取り上げた新型うつ病、変なカテゴリーを作ったために対策を練るのに少し苦労する。この問題の後始末はまだまだかかりそうである。

お盆の時期のテーマ

 お盆の時の外来や訪問診療では、お墓参りでどこに行くか、実家のルーツ、戦争の思い出など、家族背景にかかわることが話題に出ることが多い。生きづらさの背景を掘り当てることもある。

 コミケもこの時期だが、行った人の話を聞くとまた情報が深まることがある。

 お盆や正月等、調子が悪くなる時期がこの時期に集中する場合は、家族関係や兄弟関係が生きづらさの原因になることもある。病気が発生する背景を周囲の方は冷静に見ている。このことは医療者が学ばされることが多い部分である。

「馴れ合い」の善し悪し

 ストレスチェック義務化から3年経過し、どの企業においてもデータは蓄積されてきている。その中で傾向は見えてくるか。

 大規模の本社と中小規模の支社をもつ場合、たいていは規模の小さい支社のスコアが悪くなる。なぜこういう傾向になるかは、自験例のみでの話になるが

  • 支社は本社の下請けに近い業務が多いと、業務の自由度が低くなる
  • 支社が社員数を下から補充せず、退職の自然減のみだと流動性がかなりひくく人間関係が濃密になりやすい。
  • 業務以外の不安要素がある=地方に留まらなくてはいけない理由、家族や両親など

のような理由が考えられる。人間関係の膠着化により、扱いに困る上司も問題だが、慣れてくると無理な業務を押し付ける機会が多くなる。無理難題が上司から吹っ掛けられられ、引き受けても心底では怒りやわだかまりが残り、不安症状・抑うつ状態への伏線が張られる。

 人事異動はストレスになるものの、職場での人間関係や距離を適度に保つという意味で定期的に行える方がよい。昔のような「マイホームを構えたから地方ね」というのはあり得ないが、部署を定期的に変える方が、突然辞めた際に「誰がこの仕事を知っているんだよ!」と管理職があたふたしなくて済む。

 働き方改革で自分も部下も早く帰るには「これ以上は今の条件ではできない」といったビジネスライクさが必要になると思う。慣れあいで断れないが続き残業が増えていたのがこれまでの日本。大きく考え方・生き方を変えてみるのも面白いではないだろうか。少し距離のとれた周囲の方と業務をやることで、馴れ合いだと声をかけることが少なくなるので、新たにコミュニケーションをとる機会が生まれてくる。

 なあなあになっている部分、そこに気づき替えていくのが改革の第一歩である。

つながりから考える薬物依存症

 薬物依存について、公衆衛生や教育の観点、効果的な外部講師の活用など、「自分が集団にできるのは何か」を考えさせられた一冊である。

 私自身も病院・職場・保健センターなどで心理教育の担当を行っていたが、「内容はお任せします」の時もあり、その場合は単年で依頼が終わるが、事前に打ち合わせて主治医としての立場でない視点でないと言えない部分を意識した内容だと翌年も依頼が来る。自分自身恥ずかしながら、勤務先の業務をどれだけ知っているのだろうか。考えてみると閉口してしまう。土足で現場に上がらないために会社員がどんなことで悩んでいるか、企業や部署単位で固有の問題は何か、外野だから言えることは何かを考えることを今後講師を引き受ける際には考えてみようと思った。

 耳からの情報と眼からの情報の差異を踏まえた講義の資料作成は、自分はパワポのアニメーションを作る技術に乏しいので、自分のやっている方向性が近い方に向いていたので講義に向けて勇気づけられた。ほかにも学年成績の話、SNSの違いと内容自体も薬物依存支援者以外の「薬物には絶対関わらない」医療者も参考になる部分は多い印象を受けた。

「悪くなる」ことを恐れない

 休職が3-6カ月ほどすると、多くのケースでは感情的には落ち着いてくることが多い。身の回りのことができているケースが多く、外出がほとんどできなくても「ゴール」としてしまうことも少なくない。

 精神状態の回復には波があり「一喜一憂しない」ことはメランコリー型うつ病の対応の時代から変わりないが、「悪化しても慌てない」心構えも周囲は必要だと考える。

 主治医から「しばらくは会社の環境を離れて、連絡はとらないで」と言う場合、どこで負荷をかけるか悩ましくなる。休職期限で復帰になると、「悪化に影響した因子」を特定できないので、負荷をかけられず職場もやきもきし、本人ももどかしさを感じて職場に居づらくなり再休職や退職に至るケースも少なくない。

 支援者も覚悟が必要になるが、復帰を目指す場合は悪くなることも想定に入れる必要がある。仕事上の問題で調子を崩した場合、同じ壁にどう対応するかを実践し、乗り越えられれば負荷は通常に戻していける。

 負荷をかける前の前提として、業務量が適切であったか、業務内容が妥当であったかを部署内だけでなく総務や人事担当にも伝え、他のスタッフと比べて極端に業務が偏っていないか客観的に確認しておくことも大事である。

 負荷をかけて悪くすることで懸念されるのは、悪化すると能力が落ちる場合や自殺企図である。命があり極端な能力低下がなければ復帰の可能性はある。原則として双極性障害や統合失調症など内因性の疾患であれば、主治医が動かない時期に動かすのは望ましくなく、治療目標をどこに置くか主治医とやりとりが必要になる。

 逆に、危険行為や極端な能力低下が少ない、いわゆる適応障害レベルや神経症であれば、動けそうであれば主治医に動かすように働きかける場合もある。これまでのメンタルヘルス対策では内因性を想定していたため無理をさせないことが多かったが、クリニックでの患者層も職場で対応に困る層も環境因子が少なからず影響する人が殆どである。タイミングを逸しないように働きかけ、悪化を恐れないことも今後の支援には必要になるであろう。

介護力・支援力と精神疾患

 「酒でどうしようもなくなったから、入院させることはできないのか」

 この意見は、飲酒問題で影響が出たときに家族や支援者が「どうにもならない」から出てくる言葉である。精神疾患でも家族が「抱えられない」ときに同様の発言が出てくる。

 本人の同意がなければ任意入院はできない。医療保護入院といった本人の同意がなくても配偶者等の同意で入院させることもできるが、状態が危機迫っているなど精神科的問題がなければ医療保護入院は不適当である。

 家族に抱えてもらう部分が多いものの、家族関係次第で抱える力=介護力・支援力には大きな差がある。

 献身的だが定期的にデイサービスや兄弟にお願いする、デイケアに行ってもらうなどのことができ、自分の役割を決めて無理のない範囲でやれる家族は介護・支援力は十分なことが多い。逆に一人が丸抱えする、すべて放棄という時には介護・支援力が乏しいことが多く、家族面談を行うと「どこか他人事」のような印象を受けてしまうのである。

 酒や問題行動による暴力などで「もう関わりたくない」という家族も少なくない。ただ、話すタイミングを選ぶことで暴力を振るわれることなく次の一手を本人と話しあうことも可能である。「だまし討ち」で無理やり病院に連れて行くと、外来に切り替わったとたんに「あの時はよくも病院に押し込めやがって」と報復されるケースもある。

 暴力であれば警察を呼ぶなど、家族にとって望ましくない行動に対してはしかるべき行動をとることで本人の考え方に変化が生じることもある。

 医療は現実逃避や家族関係・金銭問題などすべての受け皿ではない。家で何ができるか、まずは家族だけでも受診や家族会に行ってみて役割を考えてみたり、対応の仕方を周囲の家族の話からヒントにできるとよい。

再発のサインについての一考

  抑うつ状態で休職し、リワークやデイケアで認知行動療法を行い、体調が戻ったところで職場復帰する。復帰後に話を聞いていると、「調子が悪くなる前より不調のサインが出るのが早くなった気がする」とのこと。眠れない、イライラ、たばこの本数が増える、胃がむかつく、食欲がなくなり家ですぐ横になってしまう…など。

 再発の兆候の時に無理しない、というのが対応としては多いが、問題が起きそうな場面を回避するだけでは対策が打てないことも事実である。回避した結果、仕事が振られなくなり職場にいづらくなり再休職…といった具合である。

 「ピンチはチャンスである」といったように、不調に陥った時と同じような場面に出会ったとき、自分でこれまでとは違うシナリオを描けるかどうかは実際にやってみないと分からない。その場面を乗り越えれば本人の強さになり、また調子を崩すようであれば、他の対策を立てる必要がある。この場合の考え方としては「再発を恐れない」ことである。

 万が一負荷をかけて休まれたら困る、と言われる職場も当然あるが、「今後波風立たなければ負荷はこれ以上かけることは難しくなる」ことを説明し、再発ありきの考え方を職場にも受け入れてもらう場合がある。それなりに業務ができており、今休ませるとまずい場合は、無理をさせる時期を今ではなくこの時期に、と日程を先に決めておきそのばしのぎの先延ばしを避けるようにする。

 再発の兆候に気付き、兆候が出やすくなったのは、状態が悪化しやすくなったわけではない。体の反応に自分が気付きやすくなっただけなのだ。

 そのサインが出たときにどう対応するかが課題である。環境の問題を整理し、職場の人が急激に減る、客先のきつい人の対応が辛い、家庭の問題の悩み…など自分の中で考えられるものの中から、解決できそうな問題を片づけて問題を減らしていく。反応が出たときに何ができるかを見極めるのが大事である。

 問題が起きたときの反応について、下記の図で問題や自身に起こる反応を整理していく。医療機関によって得意分野も異なり、うつ状態でも身体反応の治療から入る場合もあれば行動の変化から促す場合もある。

社員採用と神経心理学

 数式を用いながら、社員採用・契約の戦略を考えてみる。

 抑うつ状態での休職者を見渡すと、正社員に移行したあたりで不調に至った例が複数みられる。途中までは年俸制や成功報酬のような給料の出し方だったようだ。正社員になると継続雇用の保証と退職金が支給されるようになるものの、月収はは下がるが。定年まで勤め上げると合計の収入は正社員になるほうがよいという条件で、これらの方はみな正社員登用を拒否した。なぜか。

 要は目の前の収入をとるか、20-30年後の合計収入をとるか、という話である。時間経過に伴う報酬の目減りという観点でこれを考えていく。

 報酬の目減りは人間では指数関数モデルと双曲線モデルがあり、その状況に応じて2つのモデルが使い分けられている。Vが目減り後の報酬、Rがお金などの報酬、Dが時間である。κ、γの定数は個人によって異なり、衝動性の高いタイプはこの定数が小さくなる。計算するとわかるが、定数が小さくなるほどVが小さくなる。

・双曲線モデル  V=R/(1+κD) κは定数

・指数関数モデル  V=Rγγは0-1の定数

 グラフは指数関数モデルでイメージを作成したが、Excelを使ったわけではないので参考程度に。

 タバコやアルコールを含む物質使用障害、およびADHDなどの衝動性が高いタイプで定数が小さくなるようだが、この考えから正社員は左の「生涯収入が高い」、期間契約やフリーランスで時々休んだり旅に出るタイプは右の「目の前の収入が高い」方を選ぶことになる。

 最初に記載した正社員登用を拒否した方は、面接でアルコールとタバコ使用者であった。目の前の収入が減ることで人生を悲観したようである。

 これを応用すると、採用側は会社の繁忙期や中期戦略でどのような人を取ればよいかという考えにもつながる。アルコールの問題があるものの、技術及び問題行動への対策を契約時に確認した上で期間限定の支援を入れるのは雇用主・個人にとってプラスである。中長期戦略でこれらの方を正社員でとどめようとすると、逆に不満が出て長続きしないかもしれない。

参考文献 志々田一宏他 :衝動性の神経科学的基盤.精神科治療学.21;807-815,2006

休職を繰り返す場合の問題

 休職を繰り返すときに、主治医と状態像の評価を何度もやり取りすることがある。

 状態の悪化であれば、治療による改善の可能性を探る。これが一番簡単な問題解決法であるが、そううまくいかない事が多い。

 休みを繰り返すと「今度こそは」と無理に気負って過剰適応になってしまうことや、「どうせ俺なんて」と自己評価が下がった状態でいることが問題になる。また、周囲から「また休むんでしょ」と思われると大事な仕事を任されなくなる。本人はそれで割り切れても空気の悪さを感じると、職場に居づらくなり再休職になってしまう。

 休み方に関して厳しく接する場合もある。「休みがこれだけ多いと課長も仕事を振れない」と、実際に困る旨を伝えた上で、どうするかを本人に決めてもらう。後がない、と感じて行動変容を起こすこともある。

 休むと配置転換の受取先が少なくなると思われるが、キャリアプランの再考も再発対策の一部である。ただし、その後の行き先がなくなることもあるので、中長期のプランも一緒に考えることになる。

 若い方の場合は技術が積み重ならないので、ITの専門職は難しいかもしれない。総合職や他者の支援業務になりそうである。休みはじめの原因にもよるが、対人調整が苦手でなければ複数人体制で行う営業職か、など休んだ場合でも業務が止まることのない状況にしたうえでの配置を検討する。アルコールの場合は客先とのやり取りで再飲酒をすることもあることは念頭に入れておく。